作品紹介
關原紫光作品
神武天皇
神武天皇は古事記・日本書紀によれば、日本の初代の天皇と記されています。その神武天皇を人形で創るように大谷暢順本願寺法主よりご依頼をいただきました。畏れおおいことと躊躇いもありましたが、創りたいという強い想いに突き動かされ創作をさせて頂きました。まず、創作の前に神武天皇陵と橿原神宮に参拝し、それから橿原神宮の宝物館や様々な資料館を訪ねたり。気がつけば先人と向き合う期間が半年近く過ぎていました。
記紀では神武東征の激戦の時に金鳶が神武天皇の弓に止まり、その金鳶が光り輝き、天皇軍を勝利に導いたと書かれていました。その時の神武天皇は雄々しく、気高く、これからの日本の行く末を見つめ、素晴らしい国造りをするという決意に満ちた御姿だと感じた時、意識の中にはっきりとしたイメージが湧きました。「八紘一宇」の神武天皇のお心を想い、日本の国に生を受けたことに誇りと感謝をいだきながら、光り輝く凛々しい御姿を人形で表現したいという強い想いで創らせて頂きました。
創作にあたっては、前例があまりなく細部を表現するための道具などが見つからずに苦労しました。勾玉もほうぼう探し求めましたが見つからずにいた時に、私のイメージしたとおりの翡翠の勾玉を作られていた組紐制作の方にご縁が生まれました、その勾玉を使い他の石も天然石を揃えて、関原紫光が手組で仕上げました。そして金彩加工の人形専用の台のような「私だけの作り方にあった道具」を使いたいという希望を多くの方の協力を得て人形が完成しました。数々の奇跡が連続し何か他の力に導かれていたように感じます。。その経験を活かして、2作目は金鳶、弓、刀などの小道具も全て紫光が創りました。そして日本で最高の生糸が手に入り、京都で糸染め専門の長嶋正行氏に出会い、何度も試作を繰り返して特別な黒に染めてもらい「關原黒」を開発しました。この作品のお蔭で美しい黒に染まった生糸で人形の髪を結うことが出来るようになりました。
新しい作品を創るたびに超えられないのではと感じる壁を感じますが、もがいている中で、突然まるで光が差すように、頭の中に人形を完成させている自分の姿が浮かびます。その自分の姿の通りに創ると出来ていくのです。
夢中になって創っていて、気がつくと朝だった・・・ということもありました。初代・紫水はいつも「自分は人形を創るために生まれてきたんだ・・・」と言っていました。私は、その強い想いには及ばないと思っていたのですが、先人の想いを感じることで、新しい境地を開くことができた作品です。
ご尽力下さいました全ての方々へ、心より感謝申し上げます。